漫画家の下積み時代
漫画家になるまでの道のりはどんなものを想像していますか?
・何年もアシスタントで下積み、編集者と打ち合わせを繰り返しやっとの思いでデビュー。
・デビュー後も試行錯誤を繰り返し人生の全てを賭けようやく連載を掴み取る。
そんな過酷なイメージを持っている方が多いと思います。
まさにその通り、漫画家になるには過酷な道を進まねばなりません!ほとんどの漫画家が下積み期間に同時に行っていることは次の3つです。
・アルバイト
・アシスタント
・編集者と打ち合わせ&作品制作
アルバイトで生活費を稼ぎつつ漫画家のアシスタントで漫画の技術を学び、出版社に自分の作品を持ち込み編集者がつけば打ち合わせを繰り返すといういわゆる『下積み』期間を過ごしている漫画家志望者がほとんどです。
そんな下積み期間をただ漫然と何も考えず過ごすことはもったいないです。次を参考にしながら漫画家として歩む下積み時代を過ごしてください。
●漫画家に下積みは必要なのか?
●下積み時代に学べることは漫画だけではない
●漫画家のリミット

漫画家に下積みは必要なのか?
実際、漫画家に下積み期間は必要なのでしょうか?
『下積み』というのは漫画家になるための準備期間です。特にアシスタントに関しては絵の技術・見せ方を学び、自分の作品に取り入れることができます。
ですが、全ての漫画家が『下積み』を経験しているというわけではないようです。
例えば、あの有名なドラゴンボールの鳥山明先生は独学で漫画を学び若くしてデビューしています。
その他にも下積みを経験していない漫画家はたくさんいます。
【有名漫画家例】
アシスタント未経験なし
・鳥山明先生「ドラゴンボール」
・岸本先生「NARUTO」
・久保帯人先生「BLEACH」
・荒木飛呂彦先生 「ジョジョの奇妙な冒険」
などなど
『天才』として早々にデビューし漫画家として一生を遂げるような漫画家は下積みの経験がないようです。
この具体例を見てしまうと、結局「元々の才能」がなければ漫画家になれないんだと思ってしまうかもしれません。もちろん、アシスタント経験をしっかりされてから有名漫画家になった方も多くいます。
ジャンプの看板漫画「ONE PIECE」尾田栄一郎先生は、「るろうに剣心」和月伸宏先生のアシスタントをしていたそうです。
アシスタント(下積み)経験あり
・尾田栄一郎先生「ONE PIECE」
・畑健二郎先生『ハヤテのごとく!』
・小畑健先生『DEATH NOTE』
・井上雄彦先生『SLAM DUNK』
・小花美穂先生『こどものおもちゃ』
などなど
漫画の子弟関係では弟子の作品に師匠の面影があるそうです。
コツコツと作品を作り上げていく『秀才型』は下積み時代があったからこそ、漫画家から技術や表現面で盗めるものが多く爆発的にヒットさせる事ができたのだと思います。
漫画家に下積みは必要なのか?と言われれば、『絶対に必要というわけではない』けれど『下積みの経験があるほど作品に取り込める技術のレパートリーが増える』のだと思います

下積み時代に学べることは漫画だけではない
漫画家になるための下積みと聞くと漫画のみを学んでいるように聞こえます。
しかし、実はビジネス面でも学ぶことは多いです。
【漫画家としての経験で学べるビジネススキル】
①コミュニケーション能力
②インプット・アウトプット能力
③マーケティング能力
①コミュニケーション能力
アルバイト、アシスタント、出版社への持ち込みは基本的に対人となっています。社会人経験の第一歩としてコミュニケーション能力が鍛えられています。
②インプット・アウトプット能力
アシスタントでは漫画家の先生の原稿(売り物)を扱います。アシスタントはただ絵を描くのではなく、漫画家が求めている仕上がりのイメージを汲み取らなければなりません。
漫画家の求めている仕上がりにするまで何度でも描き直します。そのために相手が意図している内容であったり言葉尻から情報をインプットします。そして、意識しながら長く続ければ続けるほど、アウトプットが上手くなっていきます。
③マーケティング能力
漫画家は出版社に『自分』と『自分の作った作品』を売り込む必要があります。
世の中のことは全く考えず自分の描きたいものを描いて爆発的に売れる天才型の漫画家さんであれば問題ないですが、秀才型であれば、自分の絵柄に合うストーリーは何なのか?キャラはどんな風にするのが良いか?今、流行っていることは何なのか?
そういったことを考える必要があります。
今の時代SNSを活用した漫画家の活動が当たり前になっています。SNSで自分のファンを作り、編集者の目に留まる作品を発信していく『SNSマーケティング』方法を身につけているはずです。
漫画家下積み期間というのは、もちろん漫画家としての技術を学ぶ期間ではあります。しかし、20歳を過ぎれば社会人として世間一般からは見られるため、ビジネスマナー、編集者の方との接し方、税金など最低限知っておくべきことがあります。
漫画家は個人事業主ですから、1人で生き抜くレベルの知識・知恵は身についておくべきです。

漫画家のリミット
10代、20代を必死に漫画家として捧げてきてもなかなか芽がでず歳を重ねていくと「そろそろ潮時かな」なんて思う瞬間があると思います。
漫画家だけでなく、夢を目指す人は全体的に25歳、30歳ターニングポイントとなるケースが多いです。
そんな時、自分は漫画の事しか学んでない。履歴書に何も書けないし社会に出遅れているから採用してくれる企業もない。なんて社会に対しての劣等感を感じている人もいるはずです。
そう思ってしまうのは本気で漫画と向き合ってきたからだと思います
先ほど記述したように漫画家の下積みとして本気で積み上げてきたことは漫画を描く技術を学ぶだけでなく、「コミュニケーション能力」「インプット・アウトプット能力」「マーケティング能力」も含まれています。
世の中には年間351万人(2019年)の転職者がいると言われています。20代では76%が「転職経験なし」という結果となっていますが30代になると「転職経験なし」の割合は一気に減少し47%と約半分の人が転職しているそうです。
20歳、30歳のターニングポイントで漫画家志望者が劣等感を感じることはありません。
漫画家を目指していたって、漫画家としてビジネス力は学べます。自分をしっかりアピールし、熱意を伝えることができれば正社員にだってなれます。
下積み時代は将来の不安など考えずに全力で取り組み、たとえその夢が叶わなかったとしても自分のやってきた経験をしっかりアピールし、自信を持って大きな一歩を踏み出してみてください。
