演技の本質とは
年間30,000人
これは1年間に専門学校、養成所に通って声優の勉強を始める人の人数です。
その中から声優として活躍できるのは、200人程度です。
つまりあなたが声優として活動するためには、まずこの200人の中に入る存在になる必要があります。
200人に選ばれるために必要なモノは何でしょうか?
・特徴的な声?
・魅力的なルックス?
・カッコイイ演技?
それらは持っていて損はないですが必須ではありません。
必要なのは、演技の本質を理解することが大切なのです。
ボクはよく人に教える時、「イイ声ですね」と⾔われたら用心することを伝えています。
イイ声だねと言われることは良いことだと考えがちですが、イイ声という感想が一番に出てくるということは、感情があるような表現しかできていないということです。
表現の1つとしては悪くないのですが、その表現だけでは人の心を動かすことはできません。
現在の声優業界に蔓延している演技の流行は大げさな表現をすることです。
可愛い声、作った声、鼻にかけた喋り方。それに加えて大げさな表現を誰もがやっていますがその反面、役の心情を表現することがおろそかになってしまっているのです
大げさな表現は、車の運転に例えると何も考えずに常にアクセル全開で走っているようなものです。
演技の本質は、感情をコントロールすることなのです。
演技という本質は俳優も声優も同じ

以前、声優という職業はありませんでした。
俳優という職業だけがあり、俳優という仕事の中から声だけで表現すると言う仕事がうまれ、それが声優という職業につながっています。
つまり、俳優も声優も感情をコントロールするという演技の本質は一緒なのです。
そのキャラクターの感情をコントロールすることによって、よりリアルでその場に生きているかのような姿を見せることができるのです。
「イイ声ですね」と言われた演技も拍手を貰えるでしょう。そして「あなたの演技は良かった」とも言ってもらえるでしょう。しかし、そこまでです。
対して感情をコントロールする演技に対しては、お客様は感情が動かされ、深く感動し、噛み締めます。中には涙する人もいるでしょう
俳優はうまく演じようとかキレイに演じようとは考えていません。常に役のことを考え、そのキャラクターだったらどんな感情を抱くのか?どんな行動をとるのか?を考え続けています。
感情のコントロールを常に意識しておけば、どんな作品でもどんなキャラクターでも怖くありません。
「イイ声ですね」と言われるのではなく、「演技をしている時のあなたの声に私は大きく心を動かされました」と言われる声優になりましょう!
感情をコントロールする上でこれだけは知っておいて欲しい心構え

役者を目指す人はみんな、注目されたいと思っています。
一番誰よりも目立つ存在でありたい! とてもよくわかります。
ボクもそうです。だからこそ、人に注目される仕事を選んでいるわけですから。
仕事をたくさんもらって、売れっ子になりたい。どんな芝居でも、誰にも負けたくない。そう思っていました。
そして、自分が本番でできないと、「ああ、共演者の方にお客様にこんな下手くそなものを見せてしまった」とネガティブに考えてしまうのです。
その繰り返しでした。
今度こそやってやると思い、失敗し、ボクは何て下手くそなんだ・・・、と沈み込む。ボクは常に自分のプレッシャーに潰されていたんです。
そしてある日ボクは気付きます。
尊敬する先輩から「キャラクターのこと見てる?」と言われたからです。
これから書く言葉、とても、とても大切なことですので、よく心にとどめていただきたいと思います。
作品に敬意を払い、キャラクターを愛することができれば自然といい芝居ができる。ということです
自分がカッコよくやって目立ってやる、という意識を作品内に持ち込んだらその演技は独りよがりになってしまいますし、本当の意味で役になり切ることができません。
自分にできるだろうかという不安もまた、自意識を消せずに作品をやることになるので役ではなく役者本人の意識に支配されてしまっているため、役をリアルなものにできません
声優の本質、演技の本質とは

おわかりでしょうか?
自分が目立つ為にではなく、あくまで作品の為、演じるキャラクターの為に声優は存在するべきです。
自分を守ったり、自分を表現するのではなく、キャラクターという大きな存在になるという意識を今日から持ってください。
自分なんて捨ててしまっていいのです。
舞台の上で、収録現場で声を出して話しているのはあなたではなく、作品のキャラクターです。
養成所にいる人たち、更にはプロの役者でもこれを心得ている人はそう多くありません。
自分が目立ちたい!相手を負かそう!と考える役者たちとはもはやスケールが違ってきます。
誰もが、自分自身が大好きなままその気持ちを演技にまで持ち込んでくるのです。
作品に敬意を払わず、
キャラクターを愛そうとしない、
そんな声優が今、溢れています。
あなたがそこに切り込むことで、周りはあなたを「とんでもないやつがやってきたぞ」と思うに違いありません。
自分の意識を押しのけて感情をコントロールし、キャラクターの心情のみをしっかり表現する。
それが出来るあなたは本当にどんな役でもこなすことができるようになりますし、どんな役でも人を感動させるようになります!
お客様が見たいのは、声を吹き込んでいる声優の声ではありません。キャラクター自身の声なのです。
声優はキャラクターに声で命を吹き込む姿です!
その凄みのあるキャラクターの生きる姿に、お客様は痺れ、記憶します。