声優:大塚明夫 著『声優魂』から学ぶ、声優に必要な10のこと

大塚明夫 著書『声優魂』

「声優になりたい」奴はバカである

2015年3月25日に発売された著者:大塚明夫 『声優魂』は声優だけでなく、一般の方も学ぶべきポイントが詰まっています。

 

「声優魂」大塚明夫(星海社新書|ジセダイ)
http://ji-sedai.jp/book/publication/seiyudamashii.html

 

『声優魂』大塚明夫メッセージ_発売開始編

 

本書で私が皆さんにお伝えしたいことはただ一つ。
「声優だけはやめておけ。」

『声優魂』は、長年、声優業界の第一線で活躍し続けた大塚明夫氏だからこその冒頭文で始まります。

大塚明夫 著書『声優魂』

1.声優の人数が多すぎる

まずは日本の声優の歴史から始まります。

昔は声優という仕事はありませんでした。それこそ60年代は「声の仕事」があった時も、そこの枠に当てはめようとするのは売れない舞台役者やテレビ俳優でした。

役者の仕事ありきだったその時代では、「声優なんて売れない役者の仕事だ」と言われていた時代があります。

今では、洋画などの吹き替えからアニメのアフレコ、ゲームの音声など声だけの芝居をする役者が必要とされる時代になってきましたが、役者も声優も「演じる」という本質は変わっていません。

 

2.声優は自分で仕事を作れない

自分で仕事を作れないとはどういうことでしょうか?

声優の仕事はアニメのアフレコ、洋画などの吹き替えやゲームのキャラクターに声を吹き込むことが仕事となるので、声を吹き込む映像や台本が用意されているわけです。

そして、それらを準備するのは制作会社や脚本家、アニメーターなのです。

なので、声優は仕事が来ることをただひたすらじっと待つことしかできないのです。

スマホゲームなどが増えてきて、多くのキャラクターが登場しますが、製作にかかわる予算の都合上から一人の声優が三役の声をあてることも多くあるので、仕事の枠自体もなかなか増えることがないのも実態です。

ユーザーがアニメやスマホゲームなどに使うお金が増えない限りは仕事の枠は増えないままなのです。

 

3.人気がすべて、だが人気で出世はできない

声優は自分で仕事が作れないので、仕事をもらうためには人気がモノを言います。

実力があろうがなかろうが、人気さえあればとりあえず目先のお仕事はもらうことができます。

これは芸能人にも当てはまります。歌が上手いからと言って音楽が売れるわけではなく、面白いコントができるお笑い芸人さんだからと言ってテレビに出られるかというと、そうではないです。

ただし、人気だけでは安定した仕事は続きません。

よくお笑い芸人さんが『一発屋』と言われることがあるように、人気とは簡単にうつろいゆくものだからです。

今も声優として最前線でお仕事をされている山寺宏一さん、林原めぐみさんは人気があるから今も仕事があるのでしょうか?そんなことはありません。

声優としての実力も備わっているからこそ、少ない枠からでもお仕事を獲得できているのです。

 

4.ほとんどの声優はローンが組めない

今、声優を目指している人は若い人が多いためピンとこないかもしれませんが、ほとんどの声優はローンを組むことができません。そのため、家などの高額商品を購入することができません。

自分の家を買うことができないということは、ずっと賃貸に住むことになります。賃貸ということは、自分の持ち物ではないのでもし仮に大家さんから出て行ってくれと言われたら出て行かざるを得ません。

声優という仕事は、今月のお給料は15,000円、翌月は8万円、翌々月は0円なんてこともあり得るため、社会的な信用は低いのです。

「いや、オレは絶対にお金を返す!」と、どんなにあなたが声を張り上げようとも、そういったものなのです。

お金を貸す側の立場からすると、お金が返ってこない可能性があるというだけで、お金を貸すのが怖いのです。

 

5.夢を与えたいという言葉の傲慢さ

こんなにハイリスク・ローリターンな世界なのに何で大勢の若者が声優に憧れるのか?

聞いてみると「声優になって子供たちに夢を与えたいんです!」といった答えがよく返ってきます。

夢と言うのは与えてあげるものなのでしょうか?

夢とは本人が見るもので、決して与えられるものではありません。「夢は見るものではなく叶えるものだ」と、よくそんなセリフを見聞きしますが、これはそういったセリフで若者を煽った結果、お金を得ようとする大人たちの考えです。

夢と言うキラキラした目標でなくても良いはずです。

サラリーマンとして働き、自分の大切な奥さんと子供を養い、年に一回家族旅行をし、クリスマスと誕生日にはケーキとプレゼントでお祝いする。そんな素敵な夢もあって良いと思います。

大塚明夫 著書『声優魂』

6.芝居の世界で本当に生き残れる人

芝居の世界で本当に生き残れる人は、
1.誰もが認める圧倒的な才能を持つ天才
2.まっとうな生産社会を諦めた、他に行く場所のない人間たち

の2つだと大塚氏は言い、自分自身を「2」だと言っています。

大塚氏は大学を中退し、その後についた職業もトラックの運転手や土木のアルバイトなど、芝居とはかけ離れたものでした。

一回そういう経験をしているからこそ、役者として生きるとなった時の肚のすわり方がすごく、日々の飯が食えない可能性や老後の不安といったことはほとんどなかったそうです。

役者として生きるしかない、と覚悟を決めたのだと思います。

そうした背景があるからこそ、最近の若者が「声優になりたい」と考え、高校を卒業したら声優学校に入り、養成所を経て事務所に入った子を見ると、世の中のことを知らないままなのでうまくいかなかった時に心配もしているそうです。

だからこそ本書では、普通に仕事ができる人であるなら社会に戻ることを絶対におすすめしています。

 

7.大塚明夫でもアルバイトをしていた

インタビューを受ける時に「大塚さんでもアルバイトをされていたんですか!?」と言ったことをよく言われるそうです。

あの大塚さんでも、事務所に所属してすぐ声の仕事だけで飯が食えたと言うわけではありません。

仕事があっても月に一本か二本の仕事だけ。声の仕事がない日は朝8時から夕方5時まで土木のアルバイト現場で、夏の暑い炎天下や冬の寒い風が吹く中、ひたすら肉体労働に励んでいます。

それぐらい、声の仕事だけで食べていくのは過酷だと言うことです。

大塚明夫 著書『声優魂』

8.「いい声」なんて素人でも出せる!「声づくり」ではなく「役づくり」ができるのがプロ

「どうやったらそんなにいい声がでるのですか?」
「大塚さんは良い声だからいいですよね。僕なんて・・・」
聞き飽きた言葉、だそうです。

こういった言葉をよく聞くそうですが、まさしくその通りです。

仕事をお願いする側もいい声だから依頼しているのではなく、その物語に登場するキャラクターの役を演じられているかどうか?で判断して仕事をお願いしています。

そのためにも、基礎稽古の重要さも同時に説いています。

人より大きい声が出せるようになる。三行半を一息で喋れるようにする。など、良い芝居を演じるためにも土台となる基礎が必要です。

筋トレと一緒で、基礎稽古は自分に身に付いているのかどうか、成長しているのかどうか分かりにくいです。だから基礎稽古を継続できる人は少ないです。

本気であれば、基礎稽古をしているのは”当たり前”なのです。

大塚明夫 著書『声優魂』

9.ファンは感動についてくる

身近な人間を惚れさせられない奴は役者にはなれない

所属している声優であればマネージャーや先輩方、所属できていない声優であれば身近な友人や両親を惚れさせることができないのであれば、芝居でもお客さんを惚れさせることはできません。

事務所が悪い、マネージャーが悪い、環境が悪いと考え自分のことしか考えず”青い鳥”を探し続ける人は、どこに行っても大成しません。

これはビジネスでも同じです。

「今の仕事がやりたくない、上司が見てくれない、だから転職する。」と言って転職した人で成功した人を見たことがありません。

今の環境から逃げるのではなく、自分を磨くため、自分の成長のため前向きな異動をしない限り成功することはありません。

大塚明夫 著書『声優魂』

10.「一生役者」を目指すなら、一度は社会に出ろ

一度社会に出ることで学べることは沢山あります。

お金はきちんと毎月固定給がもらえますし、社会の一般常識を学ぶこともできます。

制作会社やアニメ製作会社は一般の企業なので、一般的な社会常識を学ぶことは、制作会社の人の気持ちを知るうえでもプラスになります。

中には「親みたいなサラリーマンになりたくないからキラキラしている声優になりたい」と言う人もいますが、そういったことを言う人こそ一度でもいいから社会に出るべきです。

“演じる”という仕事をやろうとしている人が、親の気持ちや考えを知ろうともせずキャラクターを演じることなんてできません。

登場するキャラクターにも親がいて、育ってきた環境があるから今の考え方があるわけです。

 

最後に

声優と言う仕事、声優と言う業界に大変な感謝をしているからこそ、若者に幸せになってほしいからこそ大塚氏は『声優魂』の執筆をされたんだと思います。

声優は事務所に所属しているだけなので、その会社の社員ではなく個人事業主となります。自分で自分という商品を使って売っていかないと、日々食う事にも困ります。

それほど過酷な環境だと言うことです。それほどの覚悟が必要だと言うことです。

それでも声優を目指す!自分にはその覚悟がある!という人はうまくいかなくても後悔はしないはずなので、ぜひ声優という頂を目指してほしいと思います。

 

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